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連続小説

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ご主人様に身を預けるしかない

私の身体に付いたものと同じボディーソープの香りが先ほどのシャンプーの香りを上書きするように風呂場に広がる。
私は水滴を拭かれながら、湯の温かさに身を任せる様に微睡だ。
このまま眠ったら、きっと気持ちがいいだろう。
ご主人様は私の顔だけでなく、首元まで念入りにタオルで拭いた。
終わるとタオルを椅子に置き、浴槽に入る。
浴槽は足を延ばして入ることはできるがふたりが入るには狭いが、そんなのはお構いなしをいった様子で彼は私の後ろ、背中に身体を添わせるように滑り込んだ。
私の身体は前に押しやられるが足が使えて進めず前のめりになり、顔面が水面に着く前にご主人様の手で引っ張られ状態を起こされた。


「おっと、危ない、危ない」


思ったよりも体勢が悪く、ご主人様も慌てたようだ。
私も水面がとても近くて、ハラハラした。
今度は私の身体を支えた状態でご主人様は湯に沈む。
私の身体を足の上に乗せるように、自身の足を延ばしていく。
水位が上昇するが、それに応じる様に私の身体はご主人様によって持ち上げられ肩から上はお湯に触れることはなかった。
そういうふうに調整しているのだろう。
ご主人様の臀部が完全に浴槽の底に着くと、それが明確だった。
ご主人様はしっかりと肩までお湯に浸かっているのに対し、私は一人で入っていた時と変わらない位置に水面がある。


(私、ご主人様のこと下敷きにしちゃってる!
大丈夫かな、ご主人様、重いと思ってないかな?)


私は自分の体重を知らない。
お湯の中では体が軽く浮いているような感覚があるが、だからといってきっと重さが無いわけではないだろう。


(足が痛くならないといいけれど)


ご主人様とこうしているのは嬉しいのだが、それと同時に負担になっていないかと心配だ。
自分で両腕を使い身体を支えることができればいいのだが、それは叶わない。
私はご主人様に身を預けるしかないのだ。
だからご主人様自身が辛くならない体勢をとってくれることを願うしかない。
せめて顔を見ることができれば表情で無理をしているかどうかわかるのに。
後ろにいるご主人様を見ることはできない。
今も何かをしているのだが、それを確認することはできないのでなんとなく、体勢を整えているのだと推測する。
それに合わせて私の足の位置やお尻が触れる位置も微調整された。
暫くもぞもぞと動いていたご主人様はようやく位置が安定したようで、動きを止めて私の首元に甘えるように顔を寄せる。
そして腹部に手を回し、強く抱きしめた。


「ゆうみの身体はすべすべだなぁ。
こうして触っているだけで気持ちがいいよ」


腹部を撫でながら甘い声でご主人様は言う。
お風呂場は声が良く響く。
響きが加わったご主人様の声は低温が解けるように耳に染み入りどこか幻想的で、いつもよりも素敵に思えた。

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