story

箱がデカいんだよなぁ

「ややちゃんはお隣のお部屋にいたもんね」

「そそ。
散らかるからこっちで待っててって言われたんよ」

早く妹が見たかったのに、とややは口を尖らせて見せる。
私が生まれたのはこの部屋だが、そんなに狭くは見えない。
いつもの位置では少し邪魔になるかもしれないが、台所や部屋の隅の方に居ればわざわざややを隣の部屋にやる必要はない気がした。
だが、ご主人様の事だからきっと理由があるのだ。


「ビニールとかで静電気が起きるとか、ガサガサして埃がたつからとか」


私は思いついた理由を並べた。


「あー、なるほど」


ややは納得したようだ。
私たちがお喋りをしている間にご主人様はお弁当を食べ終え、片付けるために立ち上がる。
今日は荷物があるからかテレビも点けず、まるでかき込む様な速さだった。
せっかく美味しそうなから揚げのお弁当なのに、あまり味わってないようで勿体ない気がする。
ご主人様はから揚げよりも荷物の方が楽しみだったようだ。
台所にお弁当の空を片付けたご主人様はカッターを手にこちらに戻ると、床に置いたダンボール箱の封に刃を滑らせた。
箱が開くと共にややが歓声を上げる。
中から空気が漏れ、鼻先を嗅ぎ慣れない匂いが掠めた。
埃っぽく、油のようなゴムのような、独特で嗅いでいると思わず眉間に皺がよる様な身体に悪そうな嫌な臭いだ。
尤も私はラブドールだから影響はないと思うが。


「箱がデカいんだよなぁ」


ご主人様はそう呟きながら、中からビニールでぐるぐる巻きにされた塊を取り出した。
確かにご主人様の言う通り、箱に対して出てきたものはその高さの半分くらいの大きさだ。
ご主人様は手にしたカッターでビニールを丁寧に剥いだ。
中身が露わになるが、箱や色とりどりの袋がいろいろな物が重ねられて輪ゴムでダンボールに固定されており一概に何とは言えない状態だった。


「いっぱい入ってるねぇ」


興味深そうにややがそれを見つめる。
私も目が離せなかった。
どんなものが出てくるのかと、気になって仕方がないのだ。
上部から順に、まるで積み木のように積み重ねられた荷物をご主人様は手にしたカッターで一点一点封を開けて確認していく。
上の方に乗っていた細々としたものは化粧品やお菓子、それから四角い機械部品だった。


「あ、チョコレートや!」


その中のひとつ、薄い長方形の赤い箱をご主人様が手にすると、ややの目が輝いた。
同じ物がいくつかあり、ご主人様はそれを重ねてテーブルに乗せる。
ややの視線はそれを追い、同じくそれを見ていた私の視線とぶつかった。


「チョコレート、好きなの?」


私には食べ物を食べられない、私と同じラブドールであるややがそんなに嬉しそうな理由がわからない。
憧れ的な物なのだろうか。

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