story

はんぶんこ

ご主人様は今日も出掛けてゆく。
仕事に行くのだ。
ご主人様が行ってしまうと私とややの二人きりになる。
自ら動くことができない私たちはただお喋りをして過ごすのだ。
先に口を開くのは大体ややである。


「昨日はどうやった?
あのソファめっちゃ気持ちいいやろ」

「うん、見た目よりずっと柔らかくてびっくりしちゃった」

「あたしも初めてあのソファに座った時、同じこと思った!
あのソファはね、結構最近なんよー。
床に寝かせるとお尻がぺったんこになっちゃうからってご主人様が買ったん」


私は昨晩のことを思い出した。
私を椅子に座らせたご主人様は背中や腰の位置、ソファの布地の皺をきちんと整えていた。
居心地が良くなるように調整してくれているのかと思っていたが、あれにはそういう意味があったのかと私は驚いた。
そういえば、パンツを履かせてもらう時もご主人様はしきりに跡が付くことを気にしていた気がする。


「そんなに簡単に跡が付いたりぺったんこになっちゃうものなの?」


自分で触ることができないため確認することはできないが、身体というのはそんなに繊細なものなのだろうか。
疑問に思った私はややに訊ねた。


「そうやねぇ、そんなにやわではないとは思うんやけど柔らかいみたい。
前にご主人様が3日ぐらいお仕事で家を空けたことがあるんよね。
その時はまだソファがなかったからあたしは机の椅子に居たんやけど、ご主人様が帰ってきたらあたしのお尻がぺったんこでそれはもうビックリ!ってことが。
椅子に座布団は敷いてたんやけどね」


ややは楽しそうにあははと笑った。
笑い事ではない気がするが、ややにとっては楽しい思い出のようだ。


「ええ!?それ、きちんと治ったの?」

「うんうん、なんとか治った治った!
ちょっと時間はかかったけどね」

「よかったね、ずっとぺったんこなんて嫌だもんね」


私は心の中で頷いた。
自分の身体を見たことはないけれど、歪になってしまったらきっと悲しいと思う。
だから、ややのお尻がきちんと元に戻ったことに私は安心した。


「あれの後すぐソファを買ったんよ。
これがあればまた出張があっても大丈夫!って」

「なるほど、でも今はややちゃん一人じゃないよね。
もし今ご主人様が出張になったら、椅子は一つだからどっちかしか座れないんじゃ・・・?」


あの部屋にはソファは一つしかなかった。
私は心配になる。どちらか一人しか座れないなら妹の私が我慢するべきだろう。
だってややのお尻がぺったんこになるのは嫌だし、でも自分のお尻がぺったんこになるのも望ましくはない。


「大丈夫よー。
あのソファ一人で座るには大きかったやろ?
二人ではんぶんこしたらいいんよ」


ややの素敵な提案に私は感激した。


「二人ではんぶんこなんて、楽しそう!」


リビングに居るときは向かい合っていることが多いのだ。
ややと並んでお喋りするのは今とはまた違った感じがして楽しそうだと思った。


「せやろ!」


ややは得意顔で胸を張った。

前の記事へ          次の記事へ

PAGE TOP