連続小説

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星空

真っ暗なのになんとなく周りの形が見えるというのは不思議なものだ。
いつも居る空間だからどこに何があるかはわかっているけれど、こう暗闇を通して見ると全く違う場所のようにも思える。
所々にぽつりぽつりと赤や緑の光が一粒見えるのは一体なんだろう。


(あの辺はテレビ、その下はDVDだけど・・・
あんな光、昼間はあったかな?)


あったような気もするし、無かったような気もする。
真っ暗だから目立つのだろう。
こうしていると、昼間気付かなかったものが色々と見える。


(時計、文字盤は見えないけど針はうっすら光るのね。
暗闇の中でも見えるように、かな)


私は普段と違うリビングの様子に、いつの間にかわくわくしていた。
見える範囲は限られているが、その中だけでも色々と発見があるのだ。
どうしてそこが光っているのかわからない物や、そもそも何が光っているのがわからない物もあるが、それらはただ光っているだけで、私を楽しくさせる。
まるで星が部屋の中に在るみたいだから。
本物の星空はまだ見たことがない。
夜になるとカーテンを掛けてしまうからだ。
だから星なんてテレビでしか見たことがないし、見たのはどれもここにある光とは比べ物にならない程途方もない数の、空一面に散りばめられた星空だった。
けれど、きっとあの中のほんの少しをここに持って来たら、こんな風なんじゃないかと思う。
私はそんなことを思いながら、それらを数えた。


(眠りたいときは羊を数えるといいって、ややちゃんが言ってたっけ。
星でもいいのかな。
数え終るのが先か、私が眠ってしまうのが先か、どっちだろう)


ぱっと見た感じ、私から見える範囲に光はいくつもない。
もうすでに数え終りそうな所だ。
少し視線をずらせばまだ他にもあるだろうか。


(キッチンの方とか多そうだよね、家電が多いし。
後ろにも目があったらなぁ・・・パソコンとかスマートフォンとか置いているところ、色々光ってそう)


今見える範囲を数え終り、一応カーテン側も確認しておこうと視線をずらした時だった。
不意に背後から突然聞こえた低重音に私は身を竦めた。


(な、なに!?
何かの唸り声・・・?)


背後にあるのは戸棚だけだ。
そこにはまだ見ぬパソコンがあるが、パソコンは唸るものだっただろうか。


(いやいや、そんなはずないよ!)


テレビで見るパソコンは何も言わない。
ご主人様が普段使っているスマートフォンは時々動物の鳴き声や人の笑い声が聞こえたりするけれど、あれはご主人様が何かを見ているからで、あくまでもご主人様の意思と操作がありきのものなのだ。


(えぇ、何?何か、いるの?)


低重音は近づいたり離れたり、時々止まったりしながら不規則に私の不安を煽る。
まるで意思があるようだ。

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