連続小説

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百面相

我慢していた時はあんなに表情筋の疲れを感じたのに、私の顔はまた笑おうと、いや、笑っていた。
でも所謂笑顔とは少し違うかもしれない。
どちらかと言えば、これはにやつきだ。
だから力が入っているというより、緩んでいると表現する方が近いかもしれない。
だって、さっきとは顔に入る力の感じが違うんだもの。
なんだかとても変な気分だ。
だって、さっきはあんなに笑うのを我慢していたのに今はこんな顔になってしまっている。
もちろんさっきとは勝手が違う。
さっきはご主人様の様子が可笑しくて、笑ってはいけないのに笑いそうになっていたけれど、今の笑顔は嬉しいから出てしまったものだから、悪いものではない。
でも、なんだかちょっぴり恥ずかしかった。


「なんやゆうみちゃん、そんなにやにやして」

「べ、別になんでもないよ!」

「ふぅん。
なんか、ゆうみちゃんもすっかり百面相するようになったねぇ」


ややはしみじみと言った。


「えー、そうかなぁ?」

「そうだよー。
最初はもっとかっちこちだったもん!
あー、この子とはうまくやっていけないかもしれんなーって思ったもん」

「え、そうなの・・・?」


突然の告白に私は狼狽えた。
緊張はあったが固い表情をしていた覚えはない。
確かに今ほど表情が出てはいなかったとは思うけれど、印象が悪くなる程だっただろうか。
色々なことが新鮮で考えることも沢山あって、自分の表情にまで気が回らなかったとは思う。
でも、そんな風に思われているなんて思ってもみなかったのだ。
初めて会った時から今までずっとややは気さくで友好的だったし、一度もそんな様子を見せたことはなかった。
そんなつもりはなかったが、一応謝った方がいいのだろうか。
今はそんな風には思われていないだろうけど、だからこそ初めとは違うということを伝えた方がいいのかもしれない。


「あはは、嘘やよ!
今すっごい考えてたやろ?
なんかぐるぐるしてるって顔してたで」

「えー、ひどいよ!
もう、すぐそうやってからかうんだから」

「だっていろんな顔するから可愛いんやもん。
今のゆうみちゃんの方が好きかな、可愛いし面白いし。
さっきもすごく面白かったやんなぁ?」

「むー、またそうやって・・・」


わざと大袈裟にため息をついて見せると、悪びれもせずややはまるで小悪魔のようにけたけたと笑った。
からかった後ややは必ず可愛いからと言うのだが、実は悪い気はしていない。
実際に可愛がられているのだろうという事はなんとなくわかるのだ。
だからこの溜息は不快な思いをしたことを伝える意味もあるが、本当は照れているのを隠す意味もある。
ここで照れた様子を見せたりしたら、きっともっとからかわれてしまう。
そんな気がする。


「ご主人様も可愛いって思うやんな?」

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