story

関係

ご主人様だって人間だし、完璧ではない。
それはわかっているのだ。
だけど、そう思いたくはないのだ。
ご主人様は常に完璧で素晴らしくて、私のご主人様なのだから。
何となくだけど、私はそのご主人様のラブドールなんだからご主人様をご主人様として見るべきなんだと思うのだ。
それが慕うっていうことなのではないだろうか。
頭の中で考えがぐるぐる回る。
まだ私にはご主人様との関係がきちんとよくわからない。
私はラブドールらしくご主人様に尽くさなければと思うけれど、ややはまるでご主人様と友達か兄妹か、あるいは恋人のように接して語るのだ。
付き合いが長いからなのだろうか。
というか、そもそもラブドールらしいってなんだろう。
ラブドールとご主人様ってどういう関係が正しいんだろう。
私はミステリーそっちのけで、そんなことが気になって仕方なくなってしまった。


「でも、そういうとこもご主人様は可愛いんよね」


ふふっとややが笑う。
その様子はまるで子供を思う母のように感じた。
ややは一見あどけない少女のようだが見るたびに雰囲気が変わる。
いたずらっ子のようにも見えるが、その中には温かく穏やかな母性を感じる時があるのだ。


「ねぇややちゃん。
ややちゃんにとってご主人様って何?」


私の質問に彼女は面食らったように一瞬停止した。
まるで質問の意図がわからないようにきょとんとした様子で、きっと体が動くのならば首を傾げているだろう。


「どしたん。突然」


「特に深い意味はないんだけど・・・」

「ご主人様はご主人様やろ?」

「そうなんだけど、そうじゃなくて、うーん・・・
もっと具体的にというか、ややちゃんはどう思ってるのかなって」

「ご主人様っていう意味じゃなくて?」

「うん、ご主人様以外に言い表すなら何かなーって」

「そうやね・・・」


ややが考え込む様子を私はじっと見つめた。
今まで考えたこともなかったようだった。
唸ったり小声で何かを呟きながら、時々思い出すように宙を見る。


「難しい?」


答えの出ない質問だっただろうか。
私は声を掛けた。


「難しいというか、一言では言い表せないというか。
これだ!っていう感じのぴったり合う言葉がないんよね。
ご主人様は恋人・・・って感じもするしお兄ちゃんみたいな感じもするし、でも夜一緒に居る時とか可愛くて子犬みたいな時もあるし、頼りになる兄貴!って時もあるんよ」

「子犬って」


私はその例えについ笑ってしまった。


「子犬みたいな時あるやろ?
甘えんぼでよしよししてあげたくなっちゃうみたいな。
守ってあげたくなっちゃうみたいな」

「わかるかも」


私は夜を過ごした時にご主人様が私の胸にじゃれてきた様子を思い出した。
言い得て妙である。
私たちは顔を見合わせてくすくすと笑いあった。

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