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連続小説

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勝てんわ・・・

胸元にご主人様の手がかかり、軽く留めているだけの布が簡単に解かれ肌が露わになる。
テーブルの向こうでややが息を飲むのがわかった。
そういえばややの前で裸になるのは初めてだ。


「これは、勝てんわ・・・」


私の胸を見たややはそう呟いた。
元より勝つつもりはなかっただろうが、その声色からはより深い諦めのようなものを感じる。
視界の端に見えるややは半ば放心気味に、しかしまるで視線を釘で打ち付けられたように私の胸から目を離さなかった。
そんなに注目されるとなんだか恥ずかしい。
私はできるだけ意識しないよう、彼女の方は見ないことにした。


「うわこれ、かったいな」


ブラジャーを手にしたご主人様の眉間に皺がよる。
どうやら背中のホックが外れないらしく、手を小刻みに動かしてようやくそれを外すと私の腕を持ち上げて肩紐を通した。
それから肩紐の長さを調節し、胸の膨らみを持ち上げる様にカップに押し込むとご主人様は覆いかぶさるように私に腕を回し、背中で先ほど外したホックを止めた。
上げた腕を降ろし、ご主人様は私の正面に直る。
着けたばかりのブラジャーは胸部をほとんど覆い背中の布の面積も大きく、中に何か硬い物が入っていてしっかりと私の胸を支え、見た目の華やかさはないがなんだか不思議と肩や首が少し楽になったような気がした。


「ううん、これは・・・
リアルと言えばリアルだけど、何だろうなぁ」


ご主人様は私を見て、渋い顔をする。
思っていたのと随分違ったようだ。
私は他のブラジャーをよく見たことがないから何が違うのかわからないが、きっとご主人様には何かイメージしていたものがあったのだろうと思う。


「ねぇややちゃん。
どこか、変かな?」


私はすっかり静かになってしまったややに聞いてみた。
彼女は普段からブラジャーを着けているだろうから、きっとご主人様の違和感の正体がわかるのではないかと思ったのだ。
ややは困ったように唸る。

「ううん、そうやねぇ・・・
あたし、こんなにがっちりしたブラ初めてみたわ」

「がっちり?」

「うん、あたしのはそのブラジャーみたいに上の方まで包んでないで。
いつも半分くらいかなぁ。
たまに半分より広いのもあるけど、ゆうみちゃんのそれはすんごく上の方まで包んでるやろ?」


ややはそう言って私の胸元を見た。
彼女の言っているのは膨らみを覆っている胸部部分のことだろう。
寝室で見た彼女のブラジャーに比べて布面積が広い気がしていたが、それはただ単にサイズの違いだと思っていた。
しかしそうではないらしい。
ややが今話したことを考えると、どうやらブラジャーには色々と種類があるようだ。
きっとこのブラジャーは普通とは違う、少し特殊な物なのだろう。


「やっぱりこれは返品だな」


深いため息をついて、ご主人様は着せたばかりのブラジャーを私から剥がした。

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