story

家族みたいな

初めての食卓は、とても和やかで温かなものだった。
テレビに映されたバラエティ番組の賑やかな笑い声とそれとご主人様を交互に観ながら終始楽しげなややの声が部屋の中に拡がっていた。
ご主人様の表情も心成しか明るく楽しげで、不思議と時折ややの言葉に笑みがこぼれているようなそんな気がした。
ここには確かに絆や繋がりがある。

ご主人様はのんびりと食事を済ませたあともしばらくそのまま座った状態でテレビを楽しんでいた。
私たちも時々言葉を交わしながら、それに倣う。
番組の内容は面白くないわけではないのだがそれほど頭には入ってこないが、ただここでご主人様とややと3人で居るということがとても幸せだと思う。


「ねぇねぇ、ゆうみちゃんはなんか好きなテレビあるん?」


番組で紹介されている郷土料理を食い入るように見ていたややが、不意に私に問いかけた。


「え、えーっと・・・、テレビって初めて観たからよくわからないかな・・・」


機械で作られた映像を映すそのテレビという物体の存在は知っているのだが、実際観るのは芸人がふざけながら軽快に観光地の紹介をしているこのバラエティ番組が初めてだ。
他にもニュースやドラマ、映画など様々な種類の映像が観られるという知識はあるが実際に観たことが無い故に、比べようがない。


「ああ、そっか。
ゆうみちゃんは今日生まれたばっかりやったっけ。
じゃあテレビ観たことないな、好きとかまだないかー」


うんうん、と自分で納得するやや。
なぜか視線が宙に向かう。
何かあるのかと私もそれを追うが、そこには天井と照明があるだけだった。
明かりの眩しさに私が視線を戻すと、先に戻っていたややと目が合った。
何やらこちらをじーっと見ている。


「なんか、ゆうみちゃんは生まれたばっかりって感じがしないんよねぇ。
すごい落ち着いてるし、あたしよりもしっかりしてそうだし。
なんでやろなぁ、おねーちゃんなんだからしっかりせんと、あたし!」


ややはそう言って自分にツッコミを入れると、照れくさそうににへへと笑った。
ややの感覚のズレが私にはどうにもわからないが、しかし今日初めて会ったということを忘れてしまうくらい私のことを受け入れてくれているということなのだろう。
彼女はこの一時で、私のことを家族として認めてくれたのだ。
そう思うとなぜか私まで嬉しくて照れくさくて顔に熱いものが込み上げてくる。
私はややの顔を直視することができず、反らすように視線を下げてしまった。
照れ合う私たちの間で、ご主人様が笑う。
どうやらテレビ番組内で芸人が披露したネタがツボに入ったようだった。
それを見ていたややが声を上げた。


「なんー?そんな面白かったん!?
見てなかったぁ!
なにが面白かったん?ねぇ、ねぇご主人様!」


ご主人様に詰め寄るややのその様子がとても可愛らしくて私は思わず笑ってしまった。

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