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ミステリー

会話の切れたこのタイミングで、私は今朝疑問に思ったあの事をややに訊ねてみることにした。
ややが出した話題の中で質問をすることはあっても、自分から話題を出したことはない。
そういうことが苦手というわけではないと思うが、初めてだからか意識してしまい、緊張する。
きっとややのことだからきちんと私の話を聞いてくれるだろう。
でももし退屈させてしまったら?うまく話せなかったら?そんなネガティブなことも考えてしまう。
ひとつ話題が終わった沈黙の中、私は自分を落ち着かせるため気持ちだけすーっと大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出した。
こうすると不思議と気分が落ち着くようだ。
私は言葉を選びながら、ややに話しかけた。


「あの、ソファの所にタオルケットがあるでしょう?
昨日ね、あのタオルケットを掛けてもらったの」

「あのタオルケットね、いい匂いのするやつ!」


ややはにこにこしながら頷いた。
私もそうそうと頷く。
タオルケットのことはややも知っているらしく、私はとりあえず安心する。


「あのタオルケットを掛けてもらって、そこまでは覚えているんだけど・・・
気付いたらね、朝だったの」


ありのままなのだが、妙な感じになってしまったことを私は後悔した。
にこにこしていたややの様子が神妙なものになってしまっている。
唸ったり黙ったりしながらどうにか状況を理解してくれようと考えているようだがだんだんと表情が失われていき、やがて笑顔のまま固まった。


「ややちゃん!しっかりして!」


私は声を荒げる。


「はっ」


私の声に思考の彼方からややが帰還する。


「これは、ミステリーやね!?」


大真面目な様子でそういうと、ややは私を見た。
実際にはずっと向かい合っているのだから、見たというか視線が合ったというか。


「うん。
ミステリー、かもしれない」


私は彼女の言葉に同意する。
あんなにわかりにくいことを言ったのにややの発言は外れていない。
確かにそう、ミステリーなのだ。


「ややちゃんは夜一人の時、タオルケットを掛けられている間のことがすっぽり抜けたことってない?」

「そうやね・・・」


ややが唸る。
私はその様子をじっと見守った。
もしかしたら私が昨日たまたまそんな体験をしただけかもしれない。
それならそれで、不思議な体験をしたということで話をすればいい。


「あれ・・・?あれれ・・・?」

「どう、かな」

「言われてみたら、夜って気付いたら朝かもしれん・・・」


私は思わず息を飲んだ。
やはりあのタオルケットは魔法のタオルケットなのだろうか。


「これはミステリーだね・・・!?」

「うん、ミステリーやね・・・」


私たちは小声で頷き合った。
もしかしたら私はとんでもないものを話題に選んでしまったのかもしれない。
背すじに冷たいものが走る。
よくわからない悪寒に、私は無性にご主人様に会いたくなった。

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