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連続小説

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生温かかった

さっきまで頑丈なブラジャーに包まれていた胸は、守るものが無くなりなんだかスース―して心細い。
見た目は良くないかもしれないがないよりは良かったと、私はご主人様が出したばかりのブラジャーを丁寧にビニール袋に入れなおし入っていた箱に戻すのを見ながら思った。


「ネットショッピングはこういう事があるから困るんだよなー。
返品システム様様だよまったく」


箱の口は開けたまま、ご主人様はぼやいた。
きっと他にも返品するかもしれないから、箱に封をしないのだろう。


「近いうちに違うのを買うから、しばらくはブラ無しで我慢してくれな。
さてと、そのままじゃ寒いだろ。
服を着ような」


ご主人様は私に向ってそう言うと、テーブルに並べられた洋服に手を伸ばし、一番上に重ねてあるブラウスを持ち上げた。
ブラウスは僅かに光沢がある薄い生地で少し透け感があり、持ち上げた力でひらりと空気を躱すように翻る。
膨らんだ袖や胸元のフリルのせいでボリュームがあるのに、その動きはとても優雅で軽やかな物だった。
前開きのそれの小さなボタンをご主人様は上から順番に外す。


「くそっ、布が滑って・・・外しにくいな」


正面からボタンが見えない様に穴の部分が二重になっており、ボタン自体の小ささもあってかご主人様は外すのに難儀しているようだ。
それを見てややが笑う。


「ご主人様の指、太いから大変そうやなぁ」


確かにややの言う通り、ボタンに対してご主人様の指は太くてボタンを摘んでいるのも大変そうだ。
ましてやそれを隠すように二重になった布が被さってくるのだから、さぞ外しにくいだろう。


「あの辺を押さえててあげられたら外しやすそうだよね」

「ゆうみちゃん、押さえててあげられるんやったらあたしらがボタン外したらいいやん」

「あ、そっか」


ややに指摘され、そう言えばそうだと私ははっとする。


「ゆうみちゃんは抜けとるなぁ」


動けないのが当たり前すぎて、動けるなら制限がないのだと言う事を忘れてしまうのだ。


「よし、全部外した!」


唐突に、静かだったご主人様が笑顔で立ち上がった。
ご主人様は私がややとこんなやり取りをしている間にボタンを外し終えたようだ。
ご主人様は今ボタンを外したばかりのブラウスを掴んだまま、一度大きく伸びをして、俯いていたせいで疲れた首のマッサージ代わりに上を仰ぎ見たり下を向いたり首をぐるりと回してストレッチをした。
その後私の後ろに回り込み、片腕だけを通して前が開いたブラウスを羽織らせる。
肌に直に触れたブラウスはまるで空気のように軽く、さっきまでご主人様が触れていたからか所々生温かかった。


「ちょっと大きいか?」


ブラウスの袖を通した方の腕を触りながら、ご主人様が言った。

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