story

何かしてあげたい

はじめてのご主人様からの贈り物は、とても素敵なものだった。
私はこのご主人様の元に来られたことをとても幸せだと思った。


(これからご主人様との生活が始まるんだ・・・!)


期待で胸がいっぱいだ。
生活、といっても想像がつかないが、なんだかとても楽しくて嬉しくてドキドキすることがたくさんあるような気がした。
これからずっと、この人と、ご主人様と居られるのだ。


「さて、名前も決まったし夕飯の前にここを片付けないとな」


ご主人様が周りに落ちていたビニールやゴミを拾い集め、燃えるゴミと書かれた赤い袋に入れ始めた。
動くことができない私はただそれを見ていることしかできない。


(動けたらお手伝いできるのにな・・・)


動くこと、これはドールにとって永遠の夢なのかもしれない。
自由に体が動けばいろいろとできることもあるし、ご主人様の力にもなれるのだから。
ゴミだって二人で拾い集めれば早く片付くだろうし、今みたいにダンボールを畳んで紐で縛るときなんか、私の手があればもっと楽にできるだろう。


(私はご主人様の力になれない、のかな・・・)


ちくりと胸が痛んだ。
一緒に暮らすんだから、力になりたい。
そう思うのは当たり前だと思う。
何もできないのはもどかしかった。


(ご主人様の為に何かしてあげたいな)


せっせと片づけを進めるご主人様を見ていると、自然とそんな気持ちが湧き上がる。


「よし、こんなもんかな」


まとめたゴミを部屋の外に運び終え、ご主人様は慣れた手つきで手際よく片付けを済ませてしまった。
ご主人様は片付けが得意なようで、部屋全体もいろいろと物があるのだがきちんと並べられすっきりと整っている。
もともと私の手伝いなど不要なのだろうという点が罪悪感を少し薄くした。
片付けが苦手なご主人様だったら、きっと私のやってあげたいという気持ちはより強くなっていただろう。
物が無くなり床が見えるようになった部屋はさっぱりとし、先ほどよりも広く見えた。
ご主人様が視界から外れ、何かを滑らせるようなしゃーっという音とともに部屋が暗くなる。
それから私を抱きかかえると壁にあったスイッチを押し電気を付けた。


「さて、片付けも済んだし夕飯前にややを連れてくるか。
夕海はここで待ってるんだぞ、すぐ戻るから」


窓の側、テレビの前に置かれたテーブルの周りに座椅子を並べ、私をその一つに座らせるとご主人様は奥の部屋へと行ってしまう。
言葉から察するに、どうやら誰かを連れてくるようだ。


(やや・・・?)


たぶんそれは名前なのだろうとは思う。
持っている知識の中にややという言葉はないことから、そう推測する。


(人間、かな・・・
それとも私みたいなドールなの・・・?)


私はドキドキしながら、奥の部屋からご主人様が戻るのを待った。

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