story

お姉ちゃん

ご主人様は右腕に黒髪で薄紅色の着物を着た人の形をしたものを大切そうに抱え、すぐに戻ってきた。


(女の子・・・かな)


長い黒髪に女物の着物から、女だと思った。
ご主人様よりもかなり小さいように見える。
よほど大切にされているのだろう、その容姿だけで相当手がかけられているのがわかった。
彼女が着ているのは一般的な足首までの丈ではなく膝上までのミニ丈の着物で、細やかな花模様が散りばめられている薄手の布地をグラデーションの入った淡い黄色の兵児帯で留めており、上品でありながら可愛さも感じられ、私は思わずその着物に見惚れた。


(綺麗なお着物、いいなぁ
私もああいうお洋服、着せてもらえるのかな)


ご主人様は私の服はまだないと言っていた。
ということは、いつかは用意してもらえるのだろう。
私は目の前の少女の服を見ていると、なんだかわくわくした。


「よいしょ、っと」


ご主人様が彼女を降ろし、膝をつく。
ご主人様の胸まであるかないかくらいの背丈のその子は自分から動くことはなく、ご主人様にされるがまま、私の正面の席に座らされた。
ぱっちりとした目に丁寧に切り揃えられた長い黒髪、童顔というわけではないがあどけないというかどこか幼い印象があり、着物と似た薄紅色の口元が朗らかに綻んでいるため楽しげな様子見も見える。
先ほどから微動だにしない様子から、その子はご主人様とは違うもののように見えた。


(この子も私と同じ、ドールなのかな)


座らされた彼女は瞬きひとつせず、穏やかな笑みを浮かべたままこちらを見ていた。
既視感、というのだろうか。

自分の姿を見たことがあるわけではないが、傍から見ればさっきまでの私はこんな感じだったのではないだろうか。
そんな気がする。


「これでよし」


膝をついてその子の着物の裾を正していたご主人様が立ち上がった。
彼女と私を交互に見て、少し考える。
それから言葉を選ぶようにゆっくりと、たどたどしく私たちに互いを紹介した。


「ええと。
やや、こっちが今日から・・・妹?のゆうみ。
ゆうみ、こっちはー、えーっと、お姉ちゃんのやや、だ。
これからは一緒に生活するんだから、ふたりとも仲良くするんだぞ」


まだ位置関係がはっきりしないのだろうか少し曖昧さの残る紹介ではあったが、ご主人様はもう一度私たちを交互に見て満足げに頷くと、「ちょっと夕飯買いに行ってくるから仲良くしてるんだぞ」と部屋を出て行ってしまった。


(おねえ、ちゃん・・・?)


ややと呼ばれた彼女がお姉ちゃんなのだろうか。
お姉ちゃん、というには彼女は幼いような気がした。
自分の容姿をまだ見てはいないが、胸の大きさだけ考えると私の方が彼女よりお姉ちゃんっぽい気がする。

状況を理解できないまま、私は目の前に居る女の子を見つめた。

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