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遅くなりそう

ややは座ってからずっと真剣にスマートフォンを操作しているご主人様に話しかけた。
いつもならお風呂から戻って飲み物を飲んだら寝る支度を始めるのだが、今日はまだのようだ。
わざわざ取りに行ったペットボトルのお茶も、始めに口を付けたままである。
今日は荷物を開けたり私が新しい洋服を着たり、それから新しい洋服を着た私を撮影したりしたせいでいつもよりお風呂に行くのも遅かった。
それなのにお風呂から上がってからもこんなにのんびりしているなんて、いいのだろうか。


「どれどれ・・・うん、これとこれはいらないな。
あ、これ思いっきり指写っちゃってるじゃん。
くそう、惜しいなあ。あれかな、片手で撮った時かな。
デカいから抑えないと動くんだよなぁ・・・
このアングル、特に目の光の入り方すごい良いのに」


ご主人様はスマートフォンの画面を触りながら、顔を顰めたり唸ったりと忙しそうだ。


「あー、だめやね。
全然こっち見てくれないや」


ややはやれやれといった様子で私に「今日は遅くなりそうやね」と言った。
こういう日もあるのだろうか、ややは慣れているように見える。


「ねえねえ、ご主人様は何をしているの?」

「何って、撮った写真の整理やで。
ああやって一枚一枚確認していらないのは消すんやって。
じゃないとデータがすぐいっぱいになっちゃうって言ってた」

「なるほど・・・?」


機械の事はよくわからない。
だが、きっと撮った写真はデータというものになってあの中に入っているのだろう。
さっきご主人様は私の写真を沢山撮ったけれど、あの中には今まで撮った写真がすべて入っているのだろうか。
シャッター音を一つ一つ数えていたわけではないが今日ご主人様がシャッターを切った回数だけでも相当な量だと思う。
もし普段から今日と同じくらい写真を撮っていたら、それはもうかなりの量だ。
さっき写真を撮られている時に気付いたけれど、ご主人様は同じアングルで何回か写真を撮っていた。
きっと中にはあまり違いのないものとか、さっきご主人様が言っていたようにミスをしていた写真もある。
あの小さなスマートフォンの中にどれだけの量の写真が入るのかは知らないが、毎度すべてを残すのは見るからに無理だ。
だってあんなに薄い箱なんだもん。
そりゃあすぐいっぱいになっちゃうよ。


「あんな小さい所じゃ、すぐいっぱいになっちゃうもんね」

「あはは、そうやね!
でもね、もっと小さいのもあるんやで。
パソコンにくっつける小さい箱みたいなのなんやけど、スマートフォンで撮った写真を入れておけるんやって。
なんだっけな、ゆー・・・ゆー、えす、びー?やったかな」


聞きなれない言葉に私は首を傾げた。
それに釣られたのか、言い出したややも首を傾げる。
どうやら自分で言ったことに自信がないようだ。

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