story

特別な存在

ややはよく怒ったふりや拗ねたふりをするのだ。
もしかしたら本当に怒ったり拗ねたりしているのかもしれないが、大抵それは次の話を振るとけろりと何事もなかったように通常のややに戻る。
初めのうちはいちいち戸惑ったり焦ったりしていた私だったが今ではなんとなくわかってきて、お伺いを立てつつも流すことができるようになった。
ただからかわれているのかもしれないと思うこともある。
しかし、それも嫌ではなかった。
なんというか、私が反応を示すといたずらっ子のように目を煌めかせていつもとは違う小悪魔的な笑みを浮かべるのだ。
それがなんとも可愛らしく、ついつい許してしまう。
これもまた、彼女の魅力なのだろうと思う。
私はそんなことを思いつきもしないし、演技力も無い。
だから、そういうややの仕草には感心するのだ。


「そっかぁ、私たちって全然違うけどおんなじだね」

「そうやね!」


私たちは笑い合った。
性格が違うというのは一見合わないようにも思えるが、ややと私はまるで互いの足りない部分を補うように相性がいい。
ややの性格から考えると誰とでも同じように仲良くなれるような気もするが、私はややに対して何か特別な繋がりのようなものを感じている。
姉妹だからかもしれないしただ単に相性がいいだけかもしれないが、私にとってややは特別な存在だった。
ご主人様と同じくらい、かけがえのない存在になりつつあるのだ。


「あっ」


私は声をあげた。
ふと窓も見ると、窓の外には真っ赤な夕陽が地平の向こうへ沈もうとしているところだった。


「あ、もう日が沈むね」

「ほんとや。
そろそろご主人様が帰ってくる頃やね。
ゆうみちゃんが来る前は夕焼けなんか見たことなかったんよね。
あんまり気にしてなかったけど、ご主人様が行ってきまーすって出て行って、気付いたらただいまーって帰って来てたよーな」


ご主人様のいない、ややとの二人の時間はあっという間に過ぎていく。


「それってもしかして時間が無くなっちゃってるんじゃない?」

「あっ、そうかもしれんね・・・」


ややの話を聞いて、私たちは例の時間喪失問題を思い出す。
どうやらそれはタオルケットとは関係ないらしく、私は再び項垂れた。


「でも、あんまり悪くないかもしれんよ?
すぐご主人様に会えるんやもん!
独りぼっちは寂しいし、寂しい時間がないっていうのはいいことやないかな」

「それはそうかもだけど・・・」


確かにややの言うことには一理ある。
ただ座って居ることしかできない私たちにとって、ご主人様のいない時間はきっととても辛いものだろう。
考え事をしたり空想したりするのにも限界がある。
私にはややが居るから二人でお喋りをすることができるが、もし一人だったらと思うと確かにその辛い時間が無くなるのは有り難いことかもしれない。

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