トップページ > 目次 > ぞわぞわじわじわ

連続小説

story

ぞわぞわじわじわ

ややは暫く難しい顔のままだった。
なかなか思い出せないのか、もしくは考えがまとまらなかったのだろう。
珍しく自信なさげにか細い声で、


「初めてお尻でえっちした時は嫌っていうか、気持ち悪いって思ったかもしれん」


と言った。
予想していたよりも厳しい物言いに私は驚いた。
返す言葉が浮かばず私は口を開けたまま静止する。


「あっ!
別にお尻でするのが気持ち悪いっていう意味じゃないで?
する前はすっごくワクワクしたし、もっと気持ちよくなれるかもなーとか早くしてみたい!って思ったんよ」

「ああ、そうなんだ」


慌てた様子でややは最初の言葉に補足を咥えた。
そこは誤解されたくないようだった。
私もなんとなくその気持ちはわかる。
気持ち悪いとか嫌だとかネガティブな物言いをするのはご主人様に悪い気がするのだ。


「それなら何が気持ち悪かったの?」


「うん、そうやね・・・
お尻の感覚、かなぁ。
ぞわぞわーってして身体中気持ち悪くって。
なんて言うか、それがすごく悪い感じだったんよね。
あとほら、お尻もなんかじわじわ痛い感じやったし、今思えば最初は全然良くなかったかなぁ」


眉を顰めて彼女は言う。
私はそれを聞いて、少しほっとしていた。


「そっかぁ、ややちゃんもぞわぞわじわじわだったんだね」

「うんうん。
すっかり忘れてたけどぞわぞわじわじわだったねー」

「そっかそっか、同じだね!」

「そやね!」


私たちは向かい合って笑い合った。
ラブドールなのに気持ちいいと思えないのは私の身体が変なのかもしれないと思っていたから、ややも同じだったというのはとても安心ができる。
私はどこも変じゃないのだ。
心の靄が晴れたようだった。
ややもすっかり穏やかな顔に戻っていた。


「ねぇねぇややちゃん。
最近もお尻でえっちしてる?」


私はふと疑問に思ったことを聞いてみた。
こんなことを聞くのは恥ずかしいが、ややならきっと気にしないだろう。
それどころか喜んで話してくれるかもしれない。


「うん、してるよー」


やはり思っていた通りの答えが返ってくる。
普通と言うくらいだから、きっとそれなりの頻度で行っているだろうとは思っていたのだ。
それならと私は話を続けた。


「今もぞわぞわじわじわするの?
気持ちよくなる方法とかない?」

「ふっふっふ、今はね、ぞわぞわだけど嫌ではないんよ。
最初はあんな感じだったけど、不思議なことにすればするほど段々良くなるんよね。
今では最初があんなふうだったのも忘れちゃうくらいやもん!」


ひとつの迷いもない笑顔でややは答えた。
あれが気持ちよくなるなんてにわかには信じ難いが、彼女の様子は嘘や誤魔化しているような感じではないからきっと本当なのだろう。


「あっ!
信じられないって思ってる!」

「そ、そんなことないよ!」


疑ってはいないが複雑な顔をしてしまっていたらしい。
ややに指摘され、私は慌てて笑顔を作った。

<< 呟くように言った          茶色いダンボール箱 >>

PAGE TOP