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連続小説

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深刻に捉えてしまう

「えっ?
こだわりって・・・どんなこだわり?」


私は反対側の袖のボタンを留めているご主人様を見た。
袖フェチなんて聞いたことがないけれど、確かにややの言う通り彼女の着物といい私の新しいブラウスといい形状は違えど確かにどちらも袖にゆとりがあるデザインだ。
フェチというほどではないがもしかしたら袖に何らかの魅力を感じる、と言う事はあるのかもしれない。
でも、どうだろう。
フェチって言うと性的な嗜好なのではないかと思うのだが、実際性的な事をする時は服は脱いでしまうのだからあまり意味がないのではないだろうか。
もしかして、ややとご主人様が二人で寝室に入るときは服を着たままなのだろうか。
これまで私は服を持っていなくて布だけだったから脱がされていたのかもしれない。
じゃあ、これから私は服を着たまま寝室に入るのだろうか。


「うーんと、そやね・・・
袖がひらひらしてるのが好き、とか」


ややは言ってみたもののどうやら何か明確なものがあって言い出したわけではないようだ。
きっといつものように、思っていた事をぱっと口に出してしまった或いはおふざけのようなものだったのだろう。
冗談だと笑えば良かったのかもしれないが、まだそう言った部分の境界がわからない私はつい深刻に捉えてしまうのだ。
尤も、今回の件に関しては気になる部分があったということもある。
そう言えば以前チェストの中を見たが、他にもたくさん服が入っていた。
ご主人様が袖フェチと言う事は、あの服たちもやはり袖に特徴があるのだろうか。
見た感じ、変わったところはなかったように思う。
しかしきちんと見たわけではないし、あの時はそんなことなど意識していなかったからあまり記憶が鮮明ではない。
だがややが敢えて袖がひらひらしているのが好きと言うくらいだから、そういうデザインの服がやはりあるのだろう。


「えっ。
てことは、だよ。
お着物以外でややちゃんの持ってる他の服も袖が変わってるの?」

「ううん、普通やよ?
まぁ、袖ってゆうたら浴衣とかフリフリひらひらもあるけど全部ではないやね」


私はなんだか拍子抜けしてしまった。
思わず、ないんかい!と以前テレビで見たお笑い芸人がしていたようなツッコミを入れてしまいそうになるが、それはなんだか恥ずかしいし私らしくない気がして心の中に留めた。
ややなら言うだろうけれど、私はそもそもそういう言葉を使わないし。
生まれたてだからか、私はなんだか色々と影響を受けやすいようだ。
時々ややの言葉使いがうつりそうになるし、外の知識の大半がテレビだからか最近見た番組内であったような振る舞いをしてしまいそうになるのだ。
人の人格や性格と言うのはそういうふうに周りの影響を受けて作られていくのかもしれない。

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