story

てれぱしー

「はじめまして、ゆうみちゃん!
あたしのことはややちゃんでええよー」


彼女ははきはきとそう言った。
ぱっちりとした目と楽しげに微笑んだ表情が声ととても合っている。


「ええ、と、じゃあ、ややちゃん」


姉のことをちゃん付けて呼んでいいのかとも思ったが、本人の希望ならそれでいいのだろう。


「うんうん、いい感じ!
あたし今めっちゃ嬉しいんよ。
ゆうみちゃんが来たからこれからは毎日お喋りできるんやもん」


彼女の言葉に、私は違和感を覚える。


「ご主人様とはお話ししないの?」


ひとりぼっちと言うなら話し相手ができて嬉しいというのもわかる。
だが、ご主人様がいるはずだ。
声が出せるならご主人様とも話せるのではないだろうか。

ややは少し寂しそうに、


「ラブドールと人間はお話できないんよ、あたしらとご主人様は声の出し方が違うんやって。
みやちゃんが言うには、あたしらが喋ってるのはてれぱしーっていうやつで、それは波長が同じラブドール同士でしかできないから、ご主人様たちには聞こえてないんやって。
あたしには難しい話はよくわからないんやけど、実際ご主人様には聞こえてないからそういうことなんだと思ってる」


と言った。
みやという子の受け売りだがやや自身はそれを完全に理解してはおらず、しかしできないという事実がある以上受け入れているというところのようだ。
私は先ほどのややの発言の意味を納得すると同時に、少しがっかりした。
ややと会話ができたことで、ご主人様とも同じように話すことができるのだろうと思っていたのだ。


「そうなんだ・・・ご主人様とはお話できないんだね」


「うんー、残念だけど。
でも大丈夫やで!ご主人様とはお話しできなくても通じ合えるし!」


あまりがっかりした感じを出さないようできるだけ普通に返したつもりだったのだが、私の気持ちが伝わってしまったのか、ややが励ますように声量を上げた。

「あたしが話せなくてもご主人様はいっぱい話しかけてくれるし、いろんなお話を聞かせてくれるし、あたしのこといろいろわかってくれるんよ。
ゆうみちゃんは幸せやで、すっごく素敵なご主人様のラブドールなんやもん。
それに、お姉ちゃんもいるしな」


少し照れくさそうに、ややの変わらない笑顔の頬にほんのり赤みが差したような気がした。
彼女のご主人様が大好きという気持ちと私を気遣ってくれる気持ちがとても伝わってきて、私は胸が温かくなるのを感じた。


「うん、ありがとう」


ややのお日様のような温かで明るい声で紡がれる言葉は人の心を和ませる力があるようだ。
私はすぐに彼女が大好きになった。

素敵なご主人様と優しい姉、きっと楽しくて幸せな毎日になるんだろう。
これからの生活に期待が膨らんだ。

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