story

薄水色のシーツ

「やっぱ風呂あがりはこれだなぁ!」


腰に手を当てペットボトルの中身を半分ほど一気に喉に流し込んだご主人様は、豪快に息を吐くと持っていたペットボトルを静かにテーブルの上に置いた。


「ま、お茶だけど。
ビールだったらもっといいんだけどな」

「やったらビール飲んじゃえばいいのにー」


ご主人様のつぶやきにすかさずややが茶化すように口を挟む。
二人の息が絶妙に合っているやり取りが私には少し羨ましかった。


「さて、今日はややはこっちのお部屋で寝ような。
ゆうみはちょっと待ってて」


ご主人様が座っているややを抱き上げ数歩進み部屋のドアを開けた。


「ゆうみちゃん、また明日ね!
感想聞かせてなー!」

「う、うん、また明日」


抱えられたややと軽く挨拶を交わし、私は部屋のドアが完全に閉まるまでただじーっとそちらを見ていた。
ややとご主人様がいなくなってしまった室内はとても静かで寂しい。


「私ってけっこう寂しがりやなんだなぁ」


それまではずっと独りぼっちだったから、寂しいのが当たり前だった。
当たり前すぎて、意識したこともなかったのだ。
私は心細くなって、目を閉じて耳を澄ました。
閉じたドアの向こう側にはご主人様とややがいる。
少しでも誰かの気配を感じていたかった。
向こう側では扉を開ける音や何かが擦れる音が聞こえる。


「何してるんだろ」


時折ややの楽しげな笑い声が微かに聞こえるのだ。
見えないということがいろいろと想像を膨らませてしまう。
覗いてみたいのに動くことができないことがとてももどかしかった。

しばらくして、ドアが音を立てて動いた。
ご主人様が一人で頭を掻きながら戻ってくる。
私はなぜだかとてもほっとした。


「やっぱり着物は少しめんどくさいな。
でもなー、すごい可愛いんだよな」


ややの着物のことだろうか。
ご主人様は数回唸ると、私の方を向いて微笑んだ。


「ごめんごめん、待たせたな。
ゆうみは今日は俺と一緒に寝るんだぞ」


そう言ってご主人様は一旦しゃがみこみ、私を抱き上げた。
がっしりとした大きな手に支えられて、体が宙に浮く。
ご主人様に持ち上げられるのは2回目だが、なぜだか1回目よりも優しくて温かな気がした。

ご主人様は私を抱えたままこの部屋の電気を消すと、私を支えている方と別の腕を使い慣れた手つきでややが連れていかれた部屋の隣のドアを開けた。
部屋の中は暗かったが、すぐにご主人様が電気を点ける。
数回点滅して、明かりが部屋の中を鮮明にした。


(ここは・・・)


大きな棚と木の扉が一面に取り付けられた壁、窓側にはベッドがあった。
私はご主人様の体を離れ、薄水色のシーツの上に座らせられた。
ご主人様は一緒には座らず、私の正面に立つと私の肩に手を置きじっと私の顔を見つめた。?

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