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悪い気がした

「それはイったんとは違うん?」


ややがきょとんとした顔で私に訊ねた。
昨日意識を失ったまま、気が付けば朝だった。
先に起きたご主人様に運ばれいつものようにリビングのいつもの場所にややと向かい合って座り、いつものようにご主人様は着替えて部屋を出ていく。
あの後のことは何も覚えていない。
何か夢を見ていたような気もするのだがそれも曖昧で、はっきりと内容や場面を覚えているわけではないから定かではなかった。
よっぽど疲れていたのか、普通のセックスではなかったからか、或いは快楽を覚えなかったからか。
夢を見たかどうか、それはどうしてなのか、考えても答えは出ないだろう。
気付けばいつも通りの日常が始まっていたのだ。


「うーん・・・どうだろ?
自分では違うかなぁって思うんだけど・・・だって気持ちよくなかったし」


私はややの問いに曖昧な返事をする。
いつものようにご主人様が出て行ったあと、私たちはいつものようにお喋りを始めた。
話題はもちろん、昨日の事だ。
ややが目を輝かせながら「昨日、どうやった?お風呂よかったやろ」と私に言い、私は「うん、お風呂はよかった。すごく」と答えた。
私の返答に違和感を覚えたのか、ややは「どしたん?あんまりよくなかった?」と心配そうに訊ね、私は昨日のお尻の穴でえっちをした事をややに相談することにしたのだ。
幼く見えるややにこんなことを訊ねるのは気が引けるのだが、こう見えて彼女は私よりもラブドール歴が長い先輩でありお姉さんである。


「ややちゃんはその、お尻でしたことってあるの?」


口に出すだけでもなんだか恥ずかしい。
私は言葉を籠らせながら、ややに訊ねた。


「あるよー。
あたしにも開いてるもん、お尻の穴」


ややはなぜか誇らしげに小さな胸を張った。


「そうなんだ・・・ええと、それって普通なのかなぁ?」

「聞いたことないからちゃんとはわからないけど、皆大体あると思うで?
お尻が好きって人もいるみたいやし。
うちのご主人様はそんなにすごく好きってわけでもないみたいやけど」


彼女の言葉に私は思わず唸った。


「どうしたん?」


ややが不思議そうに私を見る。


「んー、なんか、お尻でするのって普通なのかなぁって思っちゃって・・・」

「そりゃ、有ったら使うやろ?」

「まぁ、そうなんだけど・・・」


それはなんとなくわかる。
そのために用意されているのだから。
しかしそれが普通と言われると、疑問がある。
だって、あれは普通と思えるような感覚ではなかったのだ。
全身の毛が逆立ち、嫌悪感が駆け回る。
お尻もひりひりじんじんと痛いし、何度もしたいとは思えないことだった。


「あー、そんなに気持ちよくなかったん?」

「うん・・・」


申し訳ない気持ちで私は視線を下げる。
あんなにお風呂が好きなややにこんなことをいうのも、ご主人様に対してもなんだか悪い気がしたのだ。

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