story

私って...

一番最初は、真っ白な強い光だった。
目が眩むほど強く、それなのに目をそらすことも瞼を閉じることもできず、私はただその視界一面に広がる無機質な真っ白い光をじっと見つめていた。
周りは静かだ。音は、無い。無音だ。
恐ろしいまでに静まり返る中に居る。


(ここは・・・)

(私・・・)


思考の中にぽつりぽつりといくつかの言葉が浮かぶが、それに対する答えはない。
それは疑問だろうか、或いは己の存在を一つ一つ確認するためか。
繰り返し浮かぶ言葉を反復するという作業じみた思考を巡らせながら、私は光の中でただ漠然と自分という存在を感じていた。

繰り返すうち、言葉が次第に自分中に吸い込まれていくような感覚がある。
覚える、とでもいうのだろうか。それとはまた違う気がする。
吸収している。


(私。自分。)


確かにそこにいるモノ。
光の中にあって、光ではないモノだと思った。周りを覆うこの光とは別のモノだ。
私だけが、別のモノだ。


(私。なぜ・・・)


私の中の何か或いはどこかが、ぞくり、とした。
これは知っている、何故だかこのぞくりとした感覚のことは知っていると思った。
これは、そう。
これは恐怖だ。ざわざわして落ち着かない感覚。


(私は、独りぼっち・・・
私は、独りぼっちだ・・・)


この光の中に居て、光とは異なる別のモノ。
光とは交われないモノ。
?

光の中で独りぼっち。私は状況を理解した。
光は私を受け入れているわけではなく、ただ私はその中に在るだけだった。
無機質なその白に、吸い込まれそうな無音に、私は心底恐怖した。
ここは嫌だ。この光は、嫌だ。
広大に広がっているであろう光と私はのモノだ。
この光の中で私だけ、私しかいない。
それはとても弱くて、怖くて、冷たくて、此処に居てはきっと消えてしまう。
この無音のように。
それは嫌だった。とても嫌だと、とても怖いと思った。


(嫌だ)

(嫌だ、嫌だ!)

(怖い、怖いよ・・・)

(怖い、嫌だ、嫌だ、こわい、こわい)


思考の中で私はもがいた。
泣き叫んで、足掻いて、逃げようとした。
声などないけれど、そうするしかなかった。


(誰か)

(誰か、助けて)

(ここは嫌だ)

(助けて!)

(助けて、助けて!)

(誰か!助けて!)

(私を・・・助けて・・・!)


ふと、視界から光が散った。
靄が徐々に晴れるように、視界内にぼんやりと色のある物体の輪郭が現れる。
先ほどまでの無音が嘘のように、耳元ではけたたましく何かが擦れ、ガサガサと音を立てていた。


「うわ、すご・・・」


それは今まで聞いたことのない音だった。
低く、太く、耳が心地いい温かみのある音。
その音は目の前のぼんやりとした物体が発しているようだった。


「顔は・・・っと」


視界を覆っていた靄が大きな何かによって剥ぎ取られる。
音を発していた物体、それと目が合った。


(あっ・・・)


私の中で何かが、大きく力強く跳ねた。
今までなかった何かが私の中に一気に流れ込み、走った。
びりびりと痺れるような、甘く、締め付けられるような不思議な感じ。
広く、感覚が行き渡る。
足の先から太もも、腹部、胸、腕から手、指の先、口や頬、目蓋、頭の先まで。


私は今、この瞬間。


(私は、この人のために、生まれたんだ・・・!)


私は理解した。

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