story

やっぱり苦手みたい

時々ふと寂しくなってしまうのだ。
ややはもう慣れっこなのか、当たり前すぎて気にならないようだが。
時々何かが繋がったようにご主人様がこちらに気付いてくれることがある。
でも、今みたいに何もなかったようにご主人様だけが別の世界に居ることも多いのだ。
ご主人様は身形の整った私を、生まれた時に座らされた椅子に座らせた。
あれからもう何日も経ったが、普段は座椅子の方に座るためこの椅子に座るのはあれ以来だった。
いつもの座椅子とは違い脚のあるその椅子は、膝を曲げて座らなければいけない。
私はご主人様の手で関節をゆっくりと曲げながら、椅子に腰掛けた。


「これでよし、と」


ご主人様は私に膝に手を置くポーズを取らせ、一歩下がって満足げに頷く。
それからズボンの尻ポケットからスマートフォンを取り出した。


「思っていた通り、やっぱり似合う。
絶対似合うとは思っていたけど、このブラウスは賭けみたいなとこもあったからな」


スマートフォンを構え、ご主人様は言う。
まるでカメラマンにでもなったように、ご主人様は自身の位置を変えたり傾いたりしながら念入りに私の写真を撮った。
こうしてしっかりと写真を撮られるのは初めてだ。
ご主人様が写真を撮りたくなる気持ちはとてもよくわかる。
この洋服はすごく可愛くて、素敵だもの。
でもこんなふうにじっくりと写真を撮られるのは恥ずかしかった。
見ているややが囃すから余計に恥ずかしいのだ。
できることなら縮こまってしまいたい。
私はこういう、注目を集めるようなことはやっぱり苦手みたいだ。


「よしよし、いい感じだぞ!
ちょっと立ってみようか」


ご主人様はスマートフォンを手にしたまま、器用に私を椅子から立たせた。
それから腕の曲がり具合や足の位置を細かに調整し、再び下がる。
どうやら洋服のお披露目撮影会はまだ続くようだ。


「いつまで写真撮るんだろ・・・?」

「まだまだ序の口やで、あたしの着物の時は部屋の中で撮った後外まで行ったし。
まあ流石にこの時間やから、そこまではしないと思うけど。
あたしは写真撮ってもらうの好きなんやけど、ゆうみちゃんは苦手なん?」

「えっ、そういうふうに見える?」

「うーん、そうやねぇ。
なんだか困ったみたいな顔してるから」


こんな顔、と言ってややは眉間に皺を寄せ複雑そうな顔を作った。
いつの間にかそんな顔をしてしまっていたのかと私は慌てる。
そんな感覚は全くなかったが、彼女がそう見えたと言うことはかなりひどい顔をしていたのだろう。
信じられないという気持ちが半分表情がこんなにも自然に出るのだという驚きが半分、もっとも、この表情というのも私とややの間だけに通じる物なのだが。
せっかく新しい洋服で嬉しいはずなのに、そんな顔ではまるで嬉しくないみたいで罪悪感がある。

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