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連続小説

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地味やね

きっとうろ覚えなのだろう。
仕方ないと思う。
だってきっとそのゆーえすびーという物を実際に使ったことなんてなくて、ご主人様がそう言ったのを聞いただけなのだろうから。
そのゆーえすびーという物だが、どういうものなのか名前からは全く想像が付かなかった。
ややが言うにはパソコンに付ける小さい箱という事だが、スマートフォンをそのまま小さくした感じなのだろうか。
スマートフォンも十分小さいのに、それより更に小さいとなるといったいどれだけの写真をしまっておけるのだろう。
写真はデータになっているらしいからきっとすごく沢山しまっておけるのだろうとは思うのだけれど、どうしても写真と考えると厚めの紙に印刷されているというイメージがあって、あの小さな箱には結び付きにくかった。
そもそもデータってどういうものなんだろう。


「なんか、すごいよね」


私は思ったままを述べる。
実際に見たことがないから他に言いようがなかったというのもあるし、知らない事や想像もできないような事が多くてただただ感心するばかりだった。


「そうやね、なんていうんやろ。
科学・・技術の進歩?らしいけどほとんど魔法やなぁ」

「わかる!
まぁ、魔法って言うには派手さがないけど」

「あはは!確かに地味やね!」


スマートフォンも、まだ見たことがないそのゆーえすびーという物も、どちらも不思議が詰まっていることには変わりがない。
実際触れたり使うことがあればもっと違う感覚になるのかもしれないが、見ていることしかできない私達にとってそれはテレビで見るファンタジーと大した違いはないのだ。


「ん、もうこんな時間か」


ずっと下を見ていたご主人様が突然天井に向かって大きく伸びをした。
その時に丁度時計が目に入ったようだ。


「今日はこの辺にしてそろそろ寝ようかな」


よっこいしょと言ってご主人様は立ち上がると再び伸びをした後、首や腰を回す軽いストレッチで身体を解す。
私たちは同じ体勢で居る事ばかりだからわからないけれど、ご主人様は同じ体勢でいるのは大変みたいで、よくこうして身体を解すのだ。
私はその様子を見るのが結構好きだった。
なんだか身体を動かしているご主人様って生き生きしていていつもより素敵に見える気がする。


「ええっと、今日はどうしようかな。
順番でいったら今日はややか。
ああ、それなら丁度よかった」


ご主人様はスマートフォンを持ったまま私の後ろへと向かい、一度視界から外れた。
再び現れた時には何も持っていなかった。
普段ならこのまま一緒にご主人様の寝室にいかない方を抱き上げてもう一つの部屋へと連れていく。
昨日はご主人様の寝室で眠ったから、今日は私がもう一つのあの柔らかいソファのある部屋へ行くのだと思っていた。
しかしご主人様は私を抱き上げようと座椅子を後ろに引っ張ろうとした所で手を止めた。

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