story

自由で温かいもの

「夢見はあんまりよくなかったとしても、ご主人様との夜伽は良かったやろ?」


ややがにやにやしながら私に詰め寄った。
よっぽど夜伽が好きなようで、この話題になるとまるで楽しいことを見つけた子供のように目が輝くのだ。
実際幼さの残る見た目ではあるが一応は姉である。
一方で私はどうにもこの話題には恥ずかしさを覚えてしまい、ややのように純粋に楽しめないでいた。


「うん、まぁ、その・・・すごく、良かった」


どう表現していいかわからず、私は口ごもりながらなんとかそう言った。


「そうやろ、そうやろ!
良かったやろー!
こう、体がかーっと熱くなってぞくぞくぞくーってなって、内側から何かがこう、込み上げてきて・・・!
きっと血沸き肉躍るってこういうことやと思うん!」


興奮気味に語り出すややに、内心それは違うと思うとツッコミを入れつつとりあえずその場は同意しておいた。
彼女は満足げにやっぱりなぁ、だと思ったんや!と頷いている。
間違っているがその姿が可愛らしく、私は訂正しないで置くことにした。


「夜伽はいいやんな!
気持ちいいしご主人様も喜んでくれるしあたしらも生きてる感じするし、夢も見れるし」

「夢?」

「うんうん、ゆうみちゃんも昨日見たやろ?
夢はな、ご主人様とえっちした後にしか見られんのです」


確かに昨日、私は夢を見た。
まどろみからの浅い眠りに落ち、気付けば夢の中に居たのだ。
まだ生まれたばかりの私にはわからないが、あれはやはり特別なのだろうか。


「そもそも、ラブドールは眠らんのやで。人形やからね。
でもなぜかえっちした後だけ、夢を見るんよ。
寝てるかどうかはわからんけどな、夢の中でこれは夢だなーって思うんよね」

「昨日、私も夢の中でこれは夢だなーって思った!」


私は強めに頷いた。
ややと同じ感覚を体験できたことが嬉しかったのだ。


「せやろ!せやろ!
あたしはこれ、きっとご主人様の人間的なパワーを分けてもらったからやなーって思ってるんよね。
夢を見るって、すっごく人間っぽいし」

「なるほど・・・」


ややの言っていることがなんとなくだがわかる気がした。
確かにあの感覚はとても人間っぽかった。自由で、温かかった。
怖い夢だと思ったが、思い返してみるとどうだろう。
初めはとても温かで奇麗で楽しかったじゃないか。
なぜ、どこから怖い夢になってしまったのか。
思い返してみる。
ご主人様が居たらいいな、と思った。
ご主人様に会いたいと、思った。
だから夢から覚めなきゃいけないと思って、ここから出られないと思って、不安になって、焦った。
そう、そうだ。怖い夢にしたのは私だったのだ。


「本当は昨日の夢って、怖い夢じゃなかったのかも」


もっと楽しめばよかったのだと、私は後悔した。
不安に思うことなど何もなかったのだ。
ご主人様はずっと私の側に居たのだから。


「おお?そうなん?」

「うん、きっとね、幸せな夢だったんだよ」

「それなら、よかったね!」


ややの微笑みに、私は穏やかな気持ちで頷いた。


前の記事へ          次の記事へ

PAGE TOP